【2026年度版】定款の「目的」の書き方と注意点:起業家が知っておくべき基本
会社を設立する際、避けて通れないのが「定款(ていかん)」の作成です。その中でも「事業目的」は、会社がどのようなビジネスを行うのかを対外的に示す重要な項目です。適当に決めてしまうと、後々の銀行融資や許認可申請で思わぬトラブルを招くこともあります。
また、法務局で数百円払えば、誰でも履歴事項全部証明書取得でき、そこに事業目的が掛かれていますので、事業目的を見ようと思えば、誰でも見れてしまいます。
本記事では、定款の目的を決める際の基本ルールから、失敗しないための注意点まで詳しく解説します。
1. 事業目的とは何か?なぜ重要なのか
事業目的とは、簡単に言えば「その会社が何をして稼ぐのか」を明文化したものです。これには大きく分けて3つの重要な役割があります。
① 会社の権利能力の範囲を決める
会社は定款に記載された目的の範囲内でしか活動できないのが原則です(法律上の権利能力)。記載のない事業を大々的に行うことは、厳密にはルール違反となります。
② 許認可申請の必須要件
建設業、中古品販売(古物商)、宅建業、飲食業など、行政の許可が必要な事業を行う場合、定款の目的に「その事業を行うこと」が明記されている必要があります。記載がないと許可が下りず、定款変更登記(費用約3万円〜)をやり直す羽目になります。
③ 銀行や取引先からの信用
銀行融資を受ける際や、大手企業と取引を開始する際、必ずといっていいほどと言っていいほど定款の写しが求められます。「何をしているかよくわからない会社」と判断されると、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
2. 事業目的を決めるときの「3つのルール」
かつては非常に厳格だった事業目的の審査ですが、現在は「明確性」があれば比較的柔軟に認められるようになりました。しかし、以下の3点は必ず守る必要があります。
- 適法性: 法律に違反する内容ではないこと(例:麻薬の販売など)。
- 営利性: 利益を上げる目的であること(ボランティア活動のみは不可)。
- 明確性: 誰が見てもどのような事業か理解できること。
3. よくある失敗と回避するための注意点
事業目的の数は「多ければ良い」わけではない
よくある失敗として、「将来やるかもしれないから」と、現時点では関係のない事業を20個も30個も詰め込んでしまうケースがあります。 確かに上場企業の登記を見ると、100個近い事業目的を並べている会社も存在しますが、設立直後の会社や中小企業がこれを真似するのは避けたほうが賢明です。
- 金融機関からの不信感: 銀行融資の際、「結局、この会社の本業は何ですか?」と実態を疑われ、審査に悪影響を及ぼすリスクがあります。
- 許認可の混乱: 許認可が必要な業種が混ざりすぎていると、行政からのチェックが厳しくなることがあります。
- 専門性の欠如: 何でも屋に見えてしまい、取引先に対するブランディング(専門性のアピール)を損なう可能性があります。
一般的には、「現時点で確実に行うもの」+「数年以内に開始する予定があるもの」を合わせ、合計5〜10個程度に絞るのが最もバランスが良いとされています。
もし将来的に新しい事業を始めることになったら、その時に「目的変更登記」を行えば問題ありません。「今の身の丈に合った、透明性の高い定款」を作ることが、スムーズな起業への近道です。
「具体的すぎ」にも注意が必要:サービス名を入れるリスク
事業を愛するあまり、具体的な店舗名や自社のサービス名を事業目的に入れてしまうケースがありますが、これも避けるべきポイントです。 なぜなら、ビジネスに**「ピボット(事業の方向転換)」**は付きものだからです。
例えば、組織の透明化を支援する「トウメイカ」というWebサービスを運営する場合を考えてみましょう。
- 避けるべき記載: 「トウメイカ」の企画、開発、運営および保守
- 推奨される記載: コンピュータソフトウェアおよびシステムの企画、開発、運営および保守
サービス名を直接書いてしまうと、もしサービス名を変更したり、組織改善から別のジャンルへシステムを転換したりした際、その都度「事業目的の変更登記(登録免許税3万円)」が必要になってしまいます。
また、場所を限定する書き方も同様です。「〇〇駅前でのパン販売」と書いてしまうと、隣の駅に移転しただけでルール違反になりかねません。 「パン等の食品の製造・販売および飲食店の経営」のように、ビジネスの「本質」を抽象化して記載するのが、長く使える定款を作るコツです。
最後の一行には必ず「魔法の言葉」を
目的の最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という一文を必ず入れましょう。これにより、メイン事業に付随する細かな業務(例:事務作業や資材運搬など)も目的の範囲内に含まれるようになります。
4. 許認可が必要な業種の具体例
以下の事業を検討している場合は、定款の文言に特定のキーワードを入れる必要があります。
- 古物商: 「古物営業法に基づく古物商」
- 建設業: 「建設業法に基づく建設業」または具体的な業種(内装工事など)
- 介護事業: 「介護保険法に基づく居宅サービス事業」など
5. 【業種別】そのまま使える事業目的の例文集
代表的な業種において、一般的によく使われる文言をまとめました(上場企業の事業目的のみ)。これらをベースに、自社の計画に合わせてカスタマイズしてください。
🔄 トランスフォーメーション
- マーケティング、ブランディング、DX(デジタルトランスフォーメーション)デザインに関するコンサルティング並びにサービス、機会の提供
- デジタルトランスフォーメーション(DX化)の実行サポート
- GX(グリーントランスフォーメーション)に関するサービスの提供及びコンサルティング業務
- IT技術を駆使したスポーツビジネスのDX化事業
🚁 ドローン
- ドローンの仕入、製造、販売ならびに賃貸
- ドローンに関する事業の企画、運営および管理
- 無人航空機・ドローンの開発、製造、販売、メンテナンス
- ドローン操縦者の教育機関の運営、ドローンによる空撮・点検・監視・測量・運搬・散布等の業務及びドローンに係る人材派遣業務並びに関連機器の開発販売
🤖 人工知能
- 人工知能に関するプログラムの開発および販売
- AI(人工知能)に関する技術の研究、企画、開発、販売及び保守に関する業務
- 生成AIを含む人工知能技術の研究、開発、設計、運用、保守、販売及び受託業務、ライセンス提供、教育プログラムの提供、データ分析、業務効率化支援、政策提言・情報発信
- AI(人工知能)技術、機械学習、ディープラーニング技術、データ分析等に関するシステム開発
👥 ソーシャルネットワーキングサービス
- ビジネスSNS関連事業
- ソーシャルネットワーキングサービス提供事業
- ウェブサイト、ソーシャルネットワークシステム等、インターネットの機能を利用した通知・開示・情報収集・情報編集処理に係るシステムの開発及び運用
- 電子メール及びSNS等によるメッセージ配信サービスに関する事業
💳 電子決済
- 電子決済処理サービス
- 電子商取引及び電子決済システムの企画、開発、設計、製造、販売、賃貸、運用及びその代理業
- 電子マネーその他の電子的価値情報および前払式支払い手段の発行、販売および管理、電子決済システムの提供並びに資金移動業
- 電子マネーその他の電子的価値情報及び前払式支払手段の発行、販売及び管理、電子決済システムの提供並びに資金移動業
🌐 WEB3
- Web3及びブロックチェーンに関連するサービスの提供
- NFT関連、メタバース関連、その他のインターネットビジネス(WEB3等を含む)を活用したサービス及びデジタルコンテンツの企画、開発、デザイン、販売、利用並びに当該業務に関するコンサルティング業務
- ブロックチェーン技術及びWeb3関連技術を用いたシステムの企画、開発、保守並びにコンサルティング業務
- Web3サービス及びブロックチェーン技術に関するコンサルティング業務
👓 AR(拡張現実)・VR(バーチャルリアリティー)
- AR(拡張現実)・VR(バーチャルリアリティー)技術を応用したソフトウェアの企画、開発、販売
- AR(拡張現実)・VR(仮想世界)の技術を応用したインターネットサービスの企画、開発、提供
- AR技術及びVR技術を応用した事業
🦾 ロボット
- 工業用ロボット、各種機械器具の自動制御装置の設計、製造並びに販売
- 産業用ロボットの製造、販売ならびに産業用ロボット等を使用した生産工場内における自動生産化システムの設計、開発、設置、販売
- 医療用・生活支援用ロボットおよびこれらに関連する機器の製造、販売、修理
- 人工知能やロボットを活用したサービス業
- 産業用各種ロボットシステムのハードウェア、ソフトウェア、その他関連機器の企画、設計、開発、製造、販売、リース、賃貸借及び保守管理、並びに輸出入
🎨 NFT
- NFT関連、メタバース関連、その他のインターネットビジネス(WEB3等を含む)を活用したサービス及びデジタルコンテンツの企画、開発、デザイン、販売、利用並びに当該業務に関するコンサルティング業務
- NFT(非代替性トークン)及びデジタルアセットに関する企画、制作、販売、流通、決済システムの構築、運用管理並びにプラットフォーム運営
- 暗号資産・NFT 等のデジタルアセットの企画、開発、発行、販売、取得、保有、運用、流通、管理及び関連コンサルティング営
🏠 民泊関係
- 国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業
- 民泊事業に関する研究、開発、実施、運営
- 旅館業、住宅宿泊事業及び国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業等の宿泊施設の経営
- 住宅宿泊事業、住宅宿泊管理業、住宅宿泊仲介業に関する業務
🛒 IT・Webサービス・システム開発
- コンピュータソフトウェアの企画、設計、開発、販売および保守
- ウェブサイト、ウェブコンテンツ、その他インターネットを利用した各種サービスの企画、制作、販売、配信および運営
- 情報処理サービス業および情報提供サービス業
- インターネットを利用した広告、宣伝に関する業務
☕ 飲食業・キッチンカー
- 飲食店の経営
- 弁当、惣菜等の食品の調理、加工、製造および販売
- 車両による移動販売業およびケータリングサービス業
- 酒類、飲料水、食料品の販売および輸出入
👔 コンサルティング・教育
- 経営コンサルティング業務
- 各種セミナー、講演会、イベントの企画、立案、実施および運営
- 教育、研修事業および学習塾の経営
- 書籍、雑誌の執筆、編集、出版および販売
🚛 運送業・物流
- 一般貨物自動車運送事業
- 貨物軽自動車運送事業
- 倉庫業および梱包、発送業務の受託
- 物流システムに関するコンサルティング
6. まとめ:定款目的ラボを活用しよう
定款の目的は、一度登記すると変更するたびに登録免許税(3万円)がかかります。設立時にしっかりと精査しておくことが、将来のコスト削減につながります。
当サイト「定款目的ラボ」では、実際に登記されている最新の事業目的事例を簡単に検索できます。ご自身の業種に近い会社がどのような文言を使っているか、ぜひ参考にしてみてください。